足利銀行
足利銀行は、栃木県宇都宮市に本店を置く地方銀行です。地元の栃木では「あしぎん」の名称で親しまれており、栃木県内でも大きなシェアを持っていますが、関東圏の埼玉県にも進出しており、埼玉県内北部や南部では一定の知名度を獲得しています。
現在、足利銀行は金融持株会社である東証1部の「足利ホールディングス」という親会社の傘下にありますが、2016年10月には、茨城県水戸市に本店を構える地方銀行である「常陽銀行」と株式交換による経営統合を予定しています。名称については、「足利ホールディングス」も「めぶきホールディングス」へと名称変更する予定となっています。
これにより、地方銀行としては国内でトップシェアを誇るほどの規模になるとみられています。現在では、栃木県を中心に「ありがとうをチカラにかえて。」のスローガンのもと、地元栃木での高い支持と強固な基盤を築く足利銀行ですが、過去には経営破綻に追い込まれた時期もありました。
足利銀行はもともと1895年に創業した歴史の古い地方銀行です。創業時より地元に密着した堅実な経営として知られており、融資の際にも担保にとるのは現金化が容易な棚卸資産を最優先したり、不渡手形が生じた場合には、すぐさま貸出先に張り込み、回収できるまで24時間体制で見張りをつけたりなど、「リスク」に対する嗅覚が非常に強かったと言われています。
そんな石橋を叩いても渡らないような足利銀行の姿勢を人々は「逃げの足銀」と呼称していました。その体制はその後も続き、1900年代に日銀出身の頭取が来た時も、日本興業銀行出身の頭取が来た時にもやはり、その伝統に基づいた経営がなされました。
転機となったのは1967年に取締役となった尚江久夫の登場でした。待望されていたプロパー社員からの頭取である尚江は、19年にわたり足銀を引っ張り続け成長させています。尚江はバブル経済に差し掛かった頃、ある一つの戦略を打ち出すこととなり、「鶴翼作戦」と呼ばれたこの戦略は、鶴の胴体である栃木県を中心として、仙台、茨城、群馬、埼玉、東京、名古屋、大阪へと展開する「融資拡大路線」のことです。
この戦略のもと、これまでの慎重姿勢とは一変して大胆な融資を行っていきましたが、過剰な融資とは裏腹に周囲からは称賛の声が集まり、「地元の住友銀行」などと呼ばれるようになりました。しかし、バブル経済が崩壊した際にはこれまでの過剰融資のツケが一気に押し寄せ、不正融資が明るみに出たり、預金者が足利銀行の危機を感じ取って銀行に殺到する「取り付け騒ぎ」が発生するなど、混乱の時期が訪れました。
東京三菱銀行から1,000億円もの資金調達、リストラ策の公表などの対策を打ちましたが、その被害総額は3,000億とも4,000億ともいわれ、2003年より金融庁の立入検査が開始されました。この頃より破綻寸前の銀行として噂が流れ始め、2003年11月29日、当時の総理大臣である小泉純一郎氏を議長とする金融危機対応会議にて、「一時国有化」が決定されたことを受けて、足利銀行および、あしぎんフィナンシャルグループは会社更生法を申請、経営破綻することになりました。
そして、2006年に野村ホールディングス傘下の野村グループ連合の支援を受け、足利ホールディングス傘下となる足利銀行は着実に足元を固め、現在では栃木県内の貸出金シェア5割、また中小企業に対するシェアでは8割とその基盤を固めています。
そんな足利銀行の現在の特色ですが、かつて失いかけた地元の信頼を取り戻すべく、地域密着のサービスに力を入れています。例えば本支店で行う親子セミナーや子供むけにお金についての学習会を行う「キッズスクール」、また、「あしか」をモチーフにしたイメージキャラクターである「パスカル&ファミリー」は他行にはないほどの力の入れ具合であり、イベントやグッズ販売などを通じて知名度を高める施策がなされています。
また、LINEを通じて地域情報を発信するなど、新しい技術も取り入れることで「地域密着」を様々な角度から実践しようとしています。地域においてもメインバンクとなることを目標に掲げており、そのための施策として「海外展開の支援」に現在は力を入れています。昨年4月に香港駐在所の新規に立ち上げることで、アジア地域に拠点のある顧客や海外進出を検討している顧客のサポートに意欲的に取り組んでいます。
個人向け以外にも法人向けには子会社を利用したリースサービスの提供を開始しており、融資の枠を超えた支援が可能となっています。個人向けには前述したキャラクターの浸透や情報発信という金融以外の分野においての知名度を高める施策が目立っています。
こうした様々な施策で、かつての地域密着の体制を整えつつ、堅実経営でありながら新しいことにも挑戦していく足利銀行は、昨年2015年には120周年を迎えています。今年は新たなスタートの年であり、10月の経営統合からは本格的に日本を代表する地銀として、そして、地域のメインバンクとして名実ともに歩みだすことになります。
茨城に根をおろす常陽銀行と栃木を包括する足利銀行、2行の経営統合によりどのようなシナジーが生み出されるのかは金融界からも注目を集めています。経営破綻から立ち直り、「ありがとうをチカラにかえて」のもとに着実に力を取り戻す足利銀行に今後も期待が高まります。
全国の足利銀行店舗一覧
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